風に翻弄される根無し草
山崎 風雅


 幼い頃は不遇だった
 両親は不仲でケンカばかりしてた
 僕がその場を和らげることが使命だと思ってた
 母は父への不満を僕にぶつけ
 僕は妹や弟の不満のはけ口になり
 わざとゲームで負けたりして
 自信を失なわせないために懸命だった

 心の歪はその頃からだったと思う
 友達はほとんど作らなかった
 兄弟で遊ぶことがほとんどだった
 もの心つくまで
 家庭が異常だということに気づかなかった
 安心という土壌のないまま成長したので
 自分のアイデェンティティは作られなかった

 少しのことで挫折して
 死ぬことばかり考えていた少年時代青年時代
 心を許す友もいなかった
 寒かった心細かった


 ある日もある日も学校に行くのがイヤで
 よく登校拒否した
 二十代は地獄の日々だった
 
 ついに精神は蝕まれて
 精神病になってしまった
 薬の副作用でのたうちまわった
 生き地獄だった

 落書きを書きまくった
 啓発本を読みあさった
 答えはでなかった

 ある時、この苦しみを背負ってでも
 生きぬくことを誓った
 苦しいけれど死なずに生きぬいてやる

 そして、恥と思っていた精神の病を
 公にした
 声高だかに病気だと開き直った
 
 自分をさらけ出す勇気をだした
 人の運命は魑魅朦朧
 何が幸いするかわからない
 
 ひたすら、引きこもり
 母の容赦ない叱責に
 生きる力は萎えていった

 妹は理解してくれた
 こんな情けない兄を支えてくれた

 鬱の絶頂でアメリカにホームステイした 
 妹のカンパだった

 大自然の中で
 思想の全然違うアメリカ人の中で
 コミュニケーションを取ることの大切さを学んだ
 それまで、世間対自分だったのが
 個人対個人の関係を知った
 信頼関係の大切さをわかった

 病院で出せれる薬より信頼関係が
 僕の病気を改善してくれた

 対人恐怖症は改善された
 
 今、人と人の信頼関係の大切さを痛感してる
 死のうなんて思わなくなった


 思えば根無し草だったんだと思う
 少しずつ根が伸びてきた

 少しのことでも
 生きることに前向きでいたい

 無理をせず、友人を大切にして
 自分の与えられた宿命をまっとうしていきたい

 せめて周りの人の幸せに貢献したい

 風に翻弄されていた根無し草は
 少しの風では揺らがないようになってきた






自由詩 風に翻弄される根無し草 Copyright 山崎 風雅 2007-07-09 00:14:29
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