小さな
あずみの

浴槽に浮かんでいた小さな虫の死体
小さな小さな

わたしが少し波を立てたら
もう沈んで見えなくなった

彼は
どこまでも広がる青空を見ただろうか
暖かな太陽のひかりを浴びただろうか
美しくきらめく雨粒を受けただろうか
優しい月夜を飛んだだろうか
芳しい花の香りをいっぱいに吸い込んだだろうか
静かな白い雪の日を凍えて過ごしただろうか

そうであったらいいと思った
こんな
彼にとっては大海にも等しい
こんな人間の浴槽で
生涯を終えてしまったのならせめて

この世界の美しいものを
全て見てからだったら
救われるのに、とそう

それが例え人間の
傲慢だったとしても

どうか安らかに
暖かな波に抱かれて
おやすみ


自由詩 小さな Copyright あずみの 2007-07-06 16:28:43
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