この店
アハウ

今日もまた この店に来る
昔から栄えていた 商店街の一角

日が沈むと 
怪しげな ネオンが点滅して
どこからともなく もれる
男女の笑い声 娼婦のささやき

この店は 不思議
深い 沼地の臭いがする
濁り水に
男女は裸の魚になり
戯れたりする
情事の香りが立ち込めた この土地

喫煙喫茶で
人々は集い 会話ははずむ
ライターで火をつける 煙る

今日 甘露書房で
ノヴァーリスの『青い花』と
ヘルダーリンの『ヒューペリオン』が
合本になった全集の一冊を手に入れた

この店 感情の谷間で
蓮の華は咲く

情緒の水気が満ち満ちた
濁り沼で白蓮は天上の花をつける

人々は蓮の華
開花する
重い自己存在を負って

咲き誇り
風に 撓る
タバコの煙に
陽射しの直線


自由詩 この店 Copyright アハウ 2007-07-05 19:56:49
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