もしもし 苦しみ
ヨルノテガム
もしもし もしもし ――
もしも、もしも、しもしも、しもしも、
A:林檎ジュースのような苦しみかい?
B:冷やさなくていいよ常温で
A:甘い方の苦しみかい? 飲んじゃえよ
B:飲み切らないんだ
A:電話代はかかるのか?
B:糸電話でもいいさ
AB:全てに人が足りない 心が足りない
言葉も優しさも
本当のことなんて つまらないことだらけだ
A:人生の話か?
B:問題提起する気も起こらない わからない
そう、もっと暗がりの方さ
A:会いたい人はいるか?
B:いない
A:状況は?
B:頭の中だけで歩き回っている
A:疲れているか
B:疲れているな
AB:しかし本当の熱狂や祭り、空白の訪れを期待してもいる
それが待てずに、もしくは折り合いはつかずに
受話器自体の番号に連絡を取ろうとしてしまう
B:もしもし ――
A:答えは?
B:よく考えろだって
AB:リンゴジュース 甘くておいしいな
A:よく考えたか?
B:頼るな、と。
AB:自分の力に頼って、自分の力に驚け、と。
A:孤独の風は吹かないか?
B:吹くよなあ
A:俺はお前に名前をつけてやるよ、
「苦しみ」が それだ
B:そうか、そんなフレーズも懐かしく
気持ちよくなるときはある気がする
AB:リンゴジュースは飲み干したよ
B:空のコップがある
A:あるナ。
(受話器の音)ガチャ
B: あっ 繋がった、繋がったゾ、今
C:もしもし、苦しみ
お元気ですか?