月ヲも止める鼓動 ----リミット----
酸素の枷

夜の海
月の下に浮かぶ君
余命三ヶ月

メールなんかで伝えてくるなんて
近代文明は余計な事をしてくれる

僕は罪を犯しているのだろうか
肉も 魚も 野菜も 食べる
嘘も 争いも 差別も する
そして 君に言われるがまま連れ出している

海と光のベールに包まれた 神秘的な君は
この世の綺麗な所を 一点に掻き集めた器に見える


死を覚悟した者に与えられる器だろうか


いやいや 元々 絶世の美女でしたよ 僕が言うんだから
それはそれは 間違いない


だから


器を壊しに行ってもよろしいでしょうか?
今壊しておかないと後悔しますから

海の上 仰向けのまま動かない君の側に近寄る
君は僕を制止させ 月を指差す
月を見上げた僕は 


月の鼓動を肌に感じた


とても元気でいい鼓動だ
月はもっとゆったりとした鼓動だと思ってた


『あれを動かしているのは私・・・』


僕の手はいつの間にか君の胸に置かれてある


『三ヵ月後には止まるわ』


神秘的なんて糞食らえ いつもの君の笑顔


『そりゃあ 一大事』

『そう 一大事、世界は恐怖よ・・・』


無に還する者に 正義や美の意味は何なのか


『私にとっても・・・』

『僕にとっても・・・』


違う 正義や美が答えてくれなくても
愛に何かが答えてくれる


全てを捨ててやる


違う 全てを僕達の支配下に置いてやる
反旗を翻されても
その時には・・・


僕だけで済むはずだ


『よし、まずはお風呂に入ろう!』


自由詩 月ヲも止める鼓動 ----リミット---- Copyright 酸素の枷 2007-06-23 22:25:30
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