私がニフティサーブに入会してパソコン通信を始めたのは、一九九五年。
その頃、プロバイダは二つか三つの中からしか選べなかった。
ニフティにはさまざまな「フォーラム」があった。今でいえば、サイトのようなもの。ただ、インターネットのサイトと違うところは、「フォーラム」はすべてプロバイダが設置したものだということ。
「フォーラム」の管理人は有志がボランティアで務め、その人は「シスオペ」あるいは「フォーラムマネージャー」と呼ばれていた。
私は、ニフティのなかにある『文学フォーラム』というところに入会した。
電話回線を使ってネットに繋ぐ。
電話代と接続料金がかかる。接続料金は定額制を選べたが、電話代は従量制だった。書くにも読むにも接続時間に応じてお金がかかる。だから、たいていは、読みたいところを一旦ダウンロードしてから接続を切って読んでいた。書き込みをするときはあらかじめ文章を作成しておいてから接続し、アップロードする。
そのころのコンピュータの処理速度は今と比べるととてもとても遅かった。どれくらい遅かったかというと、テキストをダウンロードしている最中にモニタを流れていく文を読めるくらい遅かった。
だから、つまらない書き込みがあると、直ちに文句が出た。
「無駄な金を払わされた」
と。
一ヶ月かそこら、私は読むだけだった。
その場所に書き込むということがどういうことなのか、理解するのに時間がかかった。
「もし、書き込みするんなら、よくよく考えてからするんだよ。新聞の投稿欄みたいに大勢が見るものなんだから。しかも、新聞の投稿と違うのは編集が一切入らないということだ。書いた物がそっくりそのまま掲載されるんだからね。これがどういうことだかわかるね?」
と夫は私に忠告した。
ようやく私は、少々怖じけながらも、新入会員歓迎用会議室に書き込みをした。
「はじめまして。
いかれぽんちの文学青年とお友達になりたいです… 」
つづく