口笛
藤原有絵

めまいがするほど
一度どくんと心臓が跳ねて
膝につけた頬が重い
何度迎えても夏は早足で


あの歌が流れるたび
いないあなたの口笛がついてくる
今も泣けない苦しさで
胸がやぶけそうな夜もくる

目を閉じれば
会えてしまう気がして


あなたは一度がっかりさせて
喜ばせる事が大好きな
意地の悪い人だった


目を閉じても
会えない事はわかっている


あんなに長く傍にいても
並んで隣を歩けなかった
わけを
きっと私だけが知らなかった


夏の雨で
メロディがよく沁みる
今でも口笛の吹けない
不器用なわたしだと

語るあなたはもういない


せめて名の無い想いのまま
この歌よ
ひっそりと消えてください




自由詩 口笛 Copyright 藤原有絵 2007-06-13 01:00:04
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