絵本
なかがわひろか

絵本を読んでいました
それはとても悲しいお話でした

私は涙を流して
それは絵本の一ページに落ちました

その涙が乾くまで
私はそのページをずっと眺めていました

そのページは
まだ悲しいお話になる前で
とても幸せそうな少女の絵で
彩られていました

私はじっとそのページを眺めていました
涙が乾くまでじっと眺めていました

その少女の笑顔は
とても可愛らしくて
私はつかの間の幸せを
彼女と共有しました

涙がほとんど乾いた頃に
そっとページをめくり
少女が悲しい人生を送る様を
私はもう一度読みました

少女は最後はとてもみすぼらしい格好になり
父親に抱かれて死んでいました

私はもう一度
少女が幸せそうな顔をしていたページに戻ろうとしました

そのページはまだ渇いていなかった涙で
張り付いてしまい
無理やり開くと
ちょうど少女の笑顔の部分が
剥がれてしまいました

(「絵本」)


自由詩 絵本 Copyright なかがわひろか 2007-06-10 01:29:06
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