ない
山中 烏流

カーテンと
鉄骨の隙間から覗いた
スカートを捲る
そこに、秘密はない
 
白く染まった床と
天井の間で眠る
ストッキングを破る
そこにも、秘密は見当たらない
 
 
ステンレスの扉を開けると
生暖かい風が
頬を撫でた
 
そこには意味すらなく
また、私の必要性も
なかった
 
 
アンテナの立たない
携帯電話を
川へ投げ込む
 
鯉が飲み込んだ
飲み込んで、しまった
 
 
 (今はもう、ではなく)
 (最初から)
 
 (ないのかも)
 (しれない)
 
 
古ぼけたマンションの
はじっこのドアを開けて
中を見た
 
ただいま、と呟く
そこに
 
私は、


自由詩 ない Copyright 山中 烏流 2007-06-05 08:15:16
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