仔犬
おるふぇ

しきりに甘えてくる
路傍に捨てられた仔犬
お腹を空かせているんだろう
僕に似ているような気がする
震えながら何かを待っている

僕がポケットから
割れちゃったビスケットを
取り出して手の平に乗せて
仔犬の口に近づけると
汚れた尻尾を振りながら
夢中で食べはじめた

生活とか労働とか
何も考えずに生きていても
苦しいことはあるだろう
それが良いことなのか
悪いことであるのか
僕には判らないけれど
手の平には仔犬の唾液が
残ってひんやりした

愛してるとか大好きだよとか
もう使い古されているけれど
仔犬のクウンって鳴く声の中
寂しさに混じって
同じようなことが言いたいのかな
もっと純粋なのかな

ごめんね仔犬
僕の家じゃ君は飼えないんだ
シャンプーで洗ってあげられないよ
空を見上げれば
今にも泣きそうな気配
優しい誰かが拾ってくれますように
君が雨に濡れてしまいませんように
寂しいこの詩が明日も消えませんように

僕がさよなら言った後
振り返ると君が
つぶらな瞳で
こっち見るんだ

君の母さんは
僕じゃないぞ

この街の風の冷たさに
生きる温もりを分け合えますように


自由詩 仔犬 Copyright おるふぇ 2007-06-04 11:24:08
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