りょう

人の背中をすり抜け

雲をひろう老人を見た

誰も見ない道端のすきまに

金物ばさみを差込み

しょっている籠に入れて ふたを閉める



満杯になったら

山の上まで引きずり ふたを開け

両腕を広げて空に向かう雲を

見上げるのが楽しみらしい



手伝おうとしたら

「見たいものがあるお前さんに

 これをやらせる訳にはいかんよ」

と笑われた

だからか入道雲は

まばらな歯を見せた老人に

よく似ている


自由詩Copyright りょう 2007-06-03 14:14:41
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