朝のお母さん
なかがわひろか

朝起きたらお母さんに殺されていたので
今日は学校に行かなくてもきっと怒られないと思って
とても嬉しかったです

けれど私は少しお腹が減っていたので
朝ごはんを食べたかったのですが
お母さんはそれどころではなかったので
我慢するしかなさそうでした

お母さんは放心状態で
それを見たお父さんが
慌てふためいている姿は
なんだかとても滑稽でした

二人は私をどうするかについて
話し合っていました
私はずっとペットを飼ってほしいと思っていたので
動物園に捨ててくれたらいいと思いました

象さんやキリンさんや
ペンギンさんがたくさんいる中に
放り投げてくれたら
私はきっと毎日とても嬉しいでしょう

けれど二人は
私をビニールで包んで
車の荷台に載せて
今晩私を捨てに行こうと結論を出しました

動物を飼ってはいけないといつも言われていたので
私はその話を聞いても
それほど残念ではありませんでした
それはいつものことですから

私はせっかく学校に行かなくてもよかったので
テレビを見たり
絵本を読んだりしたかったのですが
車の荷台でぐるぐる巻きにされていては
何もすることはありません

なんだかあんなに嫌いだった学校が
今ではとても恋しく思います
みいちゃんや
けんくんに
逢いたくなって
私は一人で少し悲しくなりました

お腹が減って仕方がありません
どうせなら
おいしいものをたくさん食べさせてくれてから
殺してくれたらよかったのにと
初めて少しお母さんを
恨みました

(「朝のお母さん」)


自由詩 朝のお母さん Copyright なかがわひろか 2007-06-01 23:16:18
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