いもうとワルツ
大覚アキラ

いもうとは
もうすっかり大人になって
今ではもう三人も子どもがいる
少女だったいもうとは
母になって
まるでロボットのように
家事をこなし続けている

リビングの隅の
古くさいカセットデッキの
再生スイッチを
ガチャリと押すと
聴いたことのないワルツが
トロトロと流れ出し
そのメロディに乗って
いもうとは
踊るように家事をこなす

この家の庭には
もう花は咲かない
それどころか
この家にはもともと庭がない
いや
そもそもそこに
家があったのかどうかさえ
今ではもう怪しい

そんなあいまいな場所で
いもうとは
今日も
ワルツのメロディに乗って
踊るように家事をこなし続けている
それを横目で見ながら
三人の子どもたちは
黙々とホットケーキを食べている

三人の子どもたちは
みんなそっくりで
どれが妹でどれが兄なのか
区別がつかない
ホットケーキを食べているうちに
子どもたちは
輪郭もあいまいになって
三人なのか
一人なのか
それさえもわからなくなって
ユラユラと漂っている

何もかもがあいまいで
確かなのは
ホットケーキの甘い匂いと
トロトロと流れるワルツ
あとは何もかもあいまいで
その中で
いもうとは
まるでロボットのように
家事をこなし続けている
ワルツのメロディに乗って
踊るように


自由詩 いもうとワルツ Copyright 大覚アキラ 2007-06-01 21:06:15
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