むらさき
yoyo

水温は体を刺していくので、子供たちは明るく冷めて唇の色を変える
心配などないなんて嘘だけれど子供こそこの水温に耐えるのだと
平泳ぎのストロークは長く自由形を越して空をとんでいく
ばた足しかできない子供にビート盤を渡して
平泳ぎで私の体は宙を舞ってむらさきの楽園にふわふわと飛び立つ
ジャネットはキスをして嘘をついて去っていった
東洋人の私は真っ赤な口紅をするジャネットが嫌いだった
平泳ぎで宙を舞ってアジアの国に舞い降りて
雨にしだれる紫陽花という花をみつけ謙遜を知った
自由はむらさきで買うものではなくてその国では海の海草だった
歯を黒くして笑ってほおばる人々のいる国の中へ
私はクイックターンでアフリカを目指した
水は茶色くてプールなど大富豪の家にしかなく
温泉がプールになっているモロッコの行楽地で男に追い回されて
平泳ぎをしてむらさきの国に戻る決意をした
ジャネットはどうしているだろうか
東洋の国に結局帰った私をくすくすと笑ってまた人を騙しているだろうか
水温はまだ冷たかったから私はむらさきの唇を噛んで


自由詩 むらさき Copyright yoyo 2007-06-01 07:17:12
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