西暦2500年の土曜日の夜月
はじめ

 西暦2500年の世界は 人類は月に移住していて緑豊かで特別争いも無く暮らしている 僕は近いうちに月へ移住するつもりだ その為にはかなりまとまったお金が要る
 僕は肉体労働をしながら詩を書いて生活している 今日見える満月も緑色に輝いていてとても美しい 僕の住んでいる地域では宇宙基地が多く点在していて 真夜中でもスペースシャトルが頻繁に出ていて月に向かって飛んでいく 比較的安いアパートなのはこの騒音の影響であるが 僕はむしろ心地良く聞いているので ほとんど何とも思わない エンジンを爆発させて飛び立つ音は僕の月への想いと宇宙への想像力を大きく膨らませる
 土曜日の夜月は 僕に深い趣を感じさせる 土曜日という時間も関係があるのかもしれない 緑の月の詩を書くのにはもってこいである 今夜は西暦2500年を祝う日で 世界中でお祭りが催しされ花火などが打ち上げられている テレビで世界各地を中継していた この地域でも小さな花火が上げられて夜空を彩った しかも月に新しい国ができてから丸400年目なのでそれも兼ねて地球でも月でも盛大に祝われていた 月への料金が半額になっていて大勢の人々が月へ訪れに行っている
 僕も月へ行きたがったが お金が無かった 今まで貯めた貯金を切り崩せばいくらでも行けたが 本格的に移住することに決めていたので今回は我慢してお祭りをテレビで静かに見守っていた
 満月が人々の熱気が高揚させてしばらくして沈静化した夜空にまるでスポットライトのように輝いていた 僕の心はどんどん癒えていった 労働現場や詩がなかなか売れないなどのストレスがぽつりぽつりと消えていく 僕は缶ビールを一気飲みして詩を少し綴った ベランダからは花火と共にスペースシャトルが真っ白な煙を出しながら打ち上がっていく 僕はそれを見てこの時代に生まれて本当に良かったなと思う 緑の月はまるで緑の空の世界の入口みたいに綺麗に円を描いて開いている 見れば見るほど土曜日の月は魅力さを増し 僕の手に取って撫でることができた
 携帯電話の流行歌の着信メロディーが鳴って 僕は缶ビールの横から電話を取った 僕の彼女からだった 彼女は仕事の都合でもう月に移住していて僕とは長い間遠距離恋愛だった 電話の内容は 今月見てる? 私も今貴方のいる地球を見ているわよ やっぱり地球は蒼くて美しいわね 月って 400年前まではからっからの砂漠状態で地球からは黄色に見えたんだなんて信じられないわ! 今は緑で溢れているでしょう? 私達 緑を大切にしなきゃって本当に思うもの もう少しで月に移住しに来るのね 楽しみにしてるわ 貴方の詩が月で人々に受け入れられればいいわね きっと貴方は詩人として成功するわよ 期待してる! こっちでも西暦2500年と国家誕生400年を祝って盛大に盛り上がってる! じゃあ今度月に着いたら私に電話ちょうだい 待ってるわね …愛してる バイバイ…
 彼女からの電話が切れると満月は少しばかり移動していた 僕は長い溜め息をついて再び遠くでスペースシャトルが発射する音を聞いて詩を書き始めた 祝福すべき記念の日 僕達はこれからも地球と月を大切に守っていかなければならない と思った


自由詩 西暦2500年の土曜日の夜月 Copyright はじめ 2007-06-01 05:22:53
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