奪いとるもの
黒猫館館長

愛が欲しかったらねじりとるがいいのだ。
物が欲しかったらむしりとるがいいのだ。
幸福が欲しかったら奪いとるがいいのだ。

貴方よ。
貴方は「幸福になりたい」と言ってはならない。
そんな惰弱な根性では貴方はすぐに潰されるだろう。
貴方は「幸福を奪いとってやる」と言って
この世界へと孤立無援の戦いを挑まなくてはならないのだ。

幸福とは奪いとるものなのだ。
最大の頭脳と力をもって。
貴方ひとりの孤独な戦いの成果として。
貴方のたった一度しかない生涯を賭けて。

だが貴方よ。
奪う者が貴方ならまた奪われる他人がいることもわすれてはいけない。

世界は残酷な美に充ちている。

奪う者と奪われる者
勝つ者と負ける者
幸福な者と不幸な者

そのようなこの世界の残酷の定理を貴方はまるごと愛さなくてはならない。
そのようにしか貴方はこの残酷の世界で生き延びることはできないだろう。

貴方よ。
生きよ。
涙を流しながら。
そして同時に微笑みながら。

崇高で痛みに充ちた
この愛すべき「世界」を。


自由詩 奪いとるもの Copyright 黒猫館館長 2007-05-31 21:14:20
notebook Home