きょうりゅうとわたし
ミゼット

お前の母さんだよと恐竜が言う

地下室の扉はひんやりしている

地下室の天井から縄が一本降りている

恐竜が肩を抱き、母さんに会いに行こうと言う

恐竜の皮膚はざらざらしている

頬を掻いた

ブーンと機械の音がして 母が床に倒れているのが見えた

母は布の袋 水色の足の爪が見える

いつもこうなの?と私が聞くと

恐竜は大きく口を開けて(笑った?)覚えていないんだなと言った

母さんの顔は袋 母さんの身体は袋 お化粧をしよう 新しい身体をあげる

私は歌って 口紅で絵を描いた

花や動物やお菓子の母さん 役に立ってとってもおいしい

私は歌って 床にも絵を描いた

いまや母は赤く植物や虫を従えて新しい目覚めを待っている!

母は女王 赤のめざめ 照らす血の色…

恐竜と私は歌う 

でも 違うわ、爪が青いもの

足だけ古いままよと言うと

恐竜は布が足りなかったんだよと言った

だから、と恐竜はシャツを脱いで母の足に巻いた

それでも少し爪が見えたから、私はスカートを脱いで古い足を隠した

これで母さんの全ては新しくなった

女王、私たちを照らす光

恐竜は私を抱きしめた

皮膚はざらざらしていて 撫でられた足が痒くなった

母さんはもう大丈夫ね 私は恐竜を抱きしめた



明かりを消して、すっかり静かになった地下室

暗闇の中に母がいる

恐竜は扉を閉めた

家の中はいつもよりもずっとずっと静か

私は恐竜ともう一度抱き合う

それから手を繋いで階段を上る (父さんに会いに行きましょう、兄さん)


自由詩 きょうりゅうとわたし Copyright ミゼット 2007-05-30 23:48:50
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