観覧車
なかがわひろか

私は朝からずっと観覧車に乗っています
同じところをぐるぐるぐるぐると
朝からずっと回っています

病室の窓からは
あの人がこの観覧車を見ています
そして時折絵筆を取り出しては
描きかけの絵に色をつけます

私はあの人が
いつこの観覧車を描いてもいいように
ずっとずっと乗っています

あの人の描く観覧車には
きっとこの窓は小さすぎて
私のことなんて見えないでしょう

けれど
あの人の描いた観覧車に
私は乗っていたと
ただ、そう思えればいいのです

いつか
あの人の絵だけが遺ったとき
私はその絵を眺めながら
きっとあの人には
私のことも見えていただろうと
思いを馳せらすのです

観覧車は回ります
同じところを
何度も何度も
回ります

私はずっと
乗っています

(「観覧車」)


自由詩 観覧車 Copyright なかがわひろか 2007-05-29 19:50:46
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