「すべてがつりあいのなかで」
ベンジャミン



たとえばだれかのこうふくが
だれかのふこうのうえにあるとしたら
それはとてもかなしいことかもしれません
そのかなしみもまた
だれかのよろこびのかてになっていて
だとしたらとてもふくざつすぎてもう
ただしさとかあやまちとか
まっすぐかたることなどできません

かなうならぼくのこうふくが
だれかのふこうをささえるものならば
こんなにうれしいことはないのでしょうに

こうふくはあまりにあかるいので
くらがりにひそむかなしみは
どうしてもみおとしてしまいます
じぶんがくらがりにいるときも
こうふくはあまりにあかるいので
くらがりからうらやましそうに
どうしてもねたんでしまいます

そんなじぶんをかんじるのもいやなので
ぼくはできるかぎりいきをひそめて
そっといきていたいとおもったりもします

けれどそれはあまりにさびしいので
ときどきぼくはよわむしになって
なつのよるのくらがりにいる
ちいさなむしのいっぴきのように
じぶんのいのちをうたいあげながら
そのばにあることのよろこびと
いきていることのかんしゃを
わずかなまんぞくをもとめてなくのです

かなうならそれが
よろこびでもかなしみでもなく
すべてがつりあっているせかいの
ひとつのりそうであるのなら
たとえばだれかのこうふくや
たとえばだれかのふこうなど
まったくかんがえもせずにいられるのでしょうが

きょうもこんなくらがりで
こうしてよどおしことばをふいて
ゆれるくさわらにまぎれるように

どうしてもなくことをやめません



    


自由詩 「すべてがつりあいのなかで」 Copyright ベンジャミン 2007-05-29 18:50:10
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