新しい町
葉leaf

新しい町で
食料品を買う
就寝の手順について
思いをめぐらす

建物はどこかに
年輪を隠し持っている
タンポポの茎が
配管されている
新しい町への食欲と
昼時の食欲と
どちらが本物の食欲か
わからなくなる

マンションの九階から見る車の速度は
だまされている
窓から差し込む日の光だって
だまされている
だましているのは僕だ

車が建物の影に
入ったり出たりするのは
何の儀式だろう
儀式は風通しがよいのだが
僕を埋め立てようとする
生活は断続的に荘厳になる

窓ガラスに埋め込まれた
黒い縦線は
何の感情も思考も呼ばない
人を刺激しないという
きわめて純粋なあり方の中には
何も潜んでなどいない

遠くの川は
水面は見えるけれど
流れは見えない
光をまぶされたまま
凍ったまま
崖との角度を楽しんでいる

コンビニの店員に
道を尋ねる
店員は少しだけ
建前から本音のほうへ
移動する
知っていることと
知らないこととの
違いはとてもやさしい

自分で食事を作る
材料が変わっていく
諸段階のすきまを
電灯の光が
満たしている

新しい町の
難しさについて
その色彩の
高さについて
その交通の
硬さについて
僕は夢を呼びいれよう



自由詩 新しい町 Copyright 葉leaf 2007-05-29 15:59:10
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