春よ来い
麻生ゆり

   1
春一番がやってきても
私は寒さで震えてる

桜の花が咲いたけど
やっぱり吹雪が吹き荒れる

土筆が顔を出したけど
蕗の薹すら眠ってる

つばめが海を越えたけど
未だ雁がここにいる

お玉じゃくしがかえっても
水はやっぱり凍ったまま

蟻が地面を這ってるけど
つぼみはいまだ固かった

日ざしが優しくなったけど
風は冷たく吹いている

   2
寒くて寒くて
私はいつだって怖いんだ
止められない痛みをこらえつつ
私の傷は治らない

凍死した魂は
いつだって眠りたい私の邪魔をする
響く音は静かな鎮魂歌
そんなに私を苦しめないで

深海に沈んだ記憶が
二度と甦らぬようにと願う私を
いったい誰が見つめてくれる
いったい誰が許してくれる

果てしない欲望は
そう簡単に押さえきれない
一握の温もりのために
私は今日も嘘を重ねた

   3
春になったはずなのに
  冬が相変わらずここにいる
 いや私が勝手に独りでそう思うだけか
   いつになったら春が来るんだろう
  はーるよこい はーやくこい


自由詩 春よ来い Copyright 麻生ゆり 2007-05-28 22:38:54
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