匂い
なかがわひろか

あんたの部屋に入ったら
嗅いだこともない香りが鼻についた
こんなんあんたがつけるような匂いやない
どこぞの女が残した匂いや

せやけど、ええ匂い

あんたに抱かれてるとき
あんたはあたしの髪を
櫛で梳くように撫でた
今までそんな撫で方しいひんかったのに

せやけど、気持ちいい

あたしも
おんなじような匂いのする香りをつけて
あんたの気を引いたろかって思うけど
多分あんたは
あたしのその匂いを嗅ぎながら
その人のこと思い出す
せやから
あたしにはできへんねん
髪撫でられても
黙っとくことしかできへんねん

この部屋の香りは鼻につく
きっとあんたに会うために
シャンプーしたりリンスしたり
いろいろ時間かけてから来た匂いや
この匂いが消える頃に
また来るんやろ

せやけど、せやけど

ええ匂いや

(「匂い」)


自由詩 匂い Copyright なかがわひろか 2007-05-27 01:12:07
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