お水だったころ
床
お水の仕事をしていると、お酒が口から入って、
肝臓あたりで解毒されるアルコールに混じって、口にしたときの雰囲気や、
相手や会話の一部が酒に混じり、それは消して解毒されないのだということを、21のとき知った。
お金がないからといってはじめたスナックのバイトで、
時が立つにつれてお金に汚くなり、
ブランド品なんて興味が無かったのに、シャネルを買ったりした。
お客さんを呼ぶために、汚い奪い合いこそしなかったが、
携帯の履歴はお客の男ばかりになった。
同伴やアフターで小銭を稼ぐこともしょっちゅうで。
どんどん大学生じゃなくなっていくのはわかるのに、
夜は魅惑で、わたしを毎晩街へ誘い、年上男性の褒め言葉に宵に酔って、
あたしはおんなのこであることをやめていたのだ。
そんなふうになって、まず、同世代の男の子からデートに誘われなくなった。
それに気がついたのは大分あとだったけれど、女の子の友達の種類もすこしかわったようにおもう。
おんなの柔軟性を体をもって体感したしゅんかんである。
天然でばかだといわれ続けたあたしもしたたかになった。だまされたり、傷ついたり。
どんなおんなも、においや、体や、言葉で変わってしまう夜の世界に、
もう戻ることは無いだろうが
いまでも、時給800円のバイトはできない。
もうもどれない金銭感覚だけが、
わたしのなかに、
いまも静かに残り、時に夢となって、ふたたび夜の町にもどってゆく。