「秒針」
ソティロ

「秒針」




いちばんほそい針が
無段階に滞りなく
滑ってゆく
きちんと六度ずつ
かっちこっち
鳴っていたはずなのに
いつのまにか


一秒、
という物差しを
見落とし続けている
速度がすごい速さで
落ちている


そのうちぐるぐると
それぞれの割合が
速くなっていく
そのようすを
興味深くみていた
ら目が回った


ぼくがどんどん過去になる
押し流されて
置いていかれる
碇を失くして
漂っている幽霊船の
帆はちぎれていて
凪いだバミューダ、
海流だけが
通り過ぎてくれなくて
もう
いいのに
 と思えない
戻りたい
 と思えない
嵐に飲み込まれてしまえ
 とだけ
自棄に思うほど
照り付けて
干からびる


目を回している
時計の速度は上がる
舵は利かない


今日は何月


微速度撮影の
花が開くさまや天体の動きと
ハイスピード・カメラの
飛沫が弾ける瞬間は
同じきもちになる



ただ
ずっと無音で
それがよかった








自由詩 「秒針」 Copyright ソティロ 2007-05-23 08:01:15
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