九百九十九年
岡部淳太郎

もうすぐ
九百九十九年になります
その頃には
ひまわりも咲いているでしょう
絶望から生き残った
藁のような人びとが
ゆらゆらとゆれているでしょう
咲いてしまうことに
罪はなくて
咲いてしまったことへの
罰だけがあるのです
ただそうなってしまったという
私たちの
なんという愚かさでしょう
そうして私たちは歩き
止まり
時々駈けぬけながら
もうすぐ
九百九十九年になります
一年でも多いと長すぎて
一年でも少ないと短すぎて
私たちには
完璧も貧弱も
似合わないのです
遠い海の底で戦争があり
高い山の頂で首吊りがありました
そんな歳月のあいだ
私たちは眠り
目醒め
急ぎながら
時を砂粒へと変えていきました
群れながら咲いてしまう
なんという陰惨な微笑でしょう
やがて
私たちが花粉を受肉し
名も知らない蜜を呼び寄せる時
笑いながら埋められた人びとが
新しい希望を見出すでしょう
私たちという人びとの
なんという愚かさ
その頃には
ひまわりも咲いているでしょう
もうすぐ
九百九十九年になります



(二〇〇七年一月)


自由詩 九百九十九年 Copyright 岡部淳太郎 2007-05-21 20:45:20
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