体洗い
なかがわひろか

ママに聞いたら
パパは生まれた頃から
毎日私の体を洗ってくれていたそうです
どんなに忙しくても
パパは毎日体を洗ってくれました

小学生になると
周りの友達は
誰もパパとお風呂に入っていませんでしたが
私はパパに体を洗ってもらうのがとても好きだったので
特に気にしませんでした

中学生になったある日
私は血を出してしまいました
とてもびっくりしましたが
そんなときもパパは優しく私の体を洗ってくれました

パパは私が何をしても怒りませんでした
どんなに機嫌を損ねても
一緒にお風呂に入って
体を洗わせてあげると
すぐに直りました

私もいつしか恋人ができ
初めて男の人に抱かれました
そのときもとてもたくさん血が出ました
いつかのときのように
私は急いでパパの元へ帰り
また丁寧に体を洗ってもらいました

今では
パパはもう何を言っても理解できません
けれど私の体だけは
どんなことがあっても
毎日洗ってくれます
皮と骨になった手で
私の体中を洗ってくれます

それは他のどんな物よりも
大切に大切に洗ってくれます

(「体洗い」)


自由詩 体洗い Copyright なかがわひろか 2007-05-21 01:57:52
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