ひと
沢村 俊輔

朝、部屋の窓を開けると
鳥がさえずっている
実はあなた
この鳥ではないですか

朝、食卓につくと
あじの干物がでている
実はあなた
この、あらわに開きにされた
あじではないですか

毎日 満員電車のなか
もみくちゃにされながら
宙に揺れるつり革を
じっと見ている

毎日 満員電車のなか
もみくちゃにされながら
人と人との隙間から
窓の外の青い空をさがしている

あなたの見ているもの
あなたのさがしているもの
それが知りたくて
あなたは生かされている


自由詩 ひと Copyright 沢村 俊輔 2007-05-19 07:00:18
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