座敷童子
なかがわひろか

実家に棲みついた座敷童子は
びっくりするくらいの大食らいで
おかげでうちの家計は
火の車だそうだ

何を思ったか
その座敷童子は
どこから汲んで来たか
大量の水をバケツから
がばっとその火の車にかけたのだ

おかげで火の車は
あっさりと鎮火し
実家の家計も
なんとか持ちこたえることができた

とはいえ大食らいの座敷童子は
寝ても覚めても
朝から晩まで飯を食っているようなやつで
そのうち牛になるぞと冷やかすと
突然牛になり突進してきて
私の肋を折った
私はごめん、ごめんと言うしかなかった

そんな夏の日
座敷童子は暑い暑いと言いながら
バクバクとカキ氷を食べていた
そのうち腹を下し
トイレに駆け込んだが
そこで座敷童子は
自分に似た小さな座敷童子たちを
一斉に排泄した

生まれたての小さな座敷童子たちは
腹が減っていたのか
お腹をキュルキュルキュルキュル言わし
そのうち大食らいの座敷童子に
我も我もと飛びかかった

大食らいの座敷童子は
あっというまに小さな座敷童子たちに食いつぶされた
満腹になった小さな座敷童子たちは勝手に家の戸を開けると
ドタドタと家から出て行って
方々へ散り散りになった

やっと座敷童子がいなくなったので
私はほっとして
後に残った大食らいの座敷童子の骨を
そのまま使えそうだったので
折れたばかりの私の肋にあてがったのだった

(「座敷童子」)


自由詩 座敷童子 Copyright なかがわひろか 2007-05-19 05:15:35
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