夜と自由
木立 悟




木々によるさまざな動議が
夜の土に投げ出されている
光源を追い抜く影の群れが
道を軋ませ ころがってゆく


空は三つの重なりから成り
そのどれもが朝から遠く
空は
自由のうたを唱い


ふたつの瞳にはないものが
ひとつの瞳の裏側にはあり
闇に渦を描く泡のかがやき
音を食べては回りつづける


鏡は
ただ貫くためのもののように震え
じっと
喉元を見つめている


うたは離れ うたは馳せる
遠い焦土に立つ瞳
風の上と下の営み
星が星へ落とす影


空に重なる空の満ち干き
夜を数え 夜を聴き
あそびつかれて
ねむるなかよし


雨を残してとどろきは去る
いつのまにか汗ばんだ手をひらき
鏡に映らぬものたちの
ひとつの行方を見つめている


影の群れは
また追い抜いてゆく
離れても 離れても
自由のうたを追い抜いてゆく














自由詩 夜と自由 Copyright 木立 悟 2007-05-16 11:27:11
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