ピアニッシモ
霜天

それはもう私の中で始まっていますか
とか、君は問いかけて
僕は聞いてない振りをしながら
大きく頷いたりする

海へ突き出した街へ向かう電車は
青い車体に、菜の花が描かれていたりして
最近では、もう、誰も触ろうとはしなくなった
向かい側に座った少女が、眠り始めるまで
飛び交う言葉が、空間に、流れる車窓の
溶け合うようになるまで
本を読む振りを、したりもした

誰かが、やさしく間違えていく

始まりは、そんなふうに始まる
弱く、やさしく弱く


自由詩 ピアニッシモ Copyright 霜天 2007-05-13 02:33:46
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