炭酸レモン
Rin K
南風に乗って、夏が
駆け込んできた
いつだったか あなたは
疑いなく寄せるそれを
レモンの光、と呼んで
指先で掬い上げて口付けをした
透明な時軸につかまって、僕は
ひとまわりも
ふたまわりもしているのに
あなたは夏、から
動かずにいるから
出会いがしらに衝突して
僕らの隙間で、二度と
呼び合わない名前が
しゅわり、弾ける
サヨナラを乗せた風は
5月だけは逆に吹いて
あなたを連れたまま、どこへでも
行ってしまいたかった日の空を
ここに呼び広げては、透けてゆく
そんなときほど レモンの光が
涙に溶けて しゅわり、しゅわり
南風に乗って、夏が
レモンが、あなたが
弾ける、弾ける
とめどなく湧き上がる気泡を
僕は 記憶、と呼んだ