記述
むらさき

あたしは あんたのことがきらいだと言う

たてじまのTシャツを着たあんたは 聞こえないふりをして
うすべったい腹を 時計まわりになでていた

あたしには なんの文句もない
いつもどおりの怠慢で こけしのような顔つきをする

あんたは 冷蔵庫をあけて クリームチーズを探している

(むずかしい話はやめませんか
朝食が終わったら忘れないうちに 電話横のメモに
おたがいの名前なんかをかきつけておきましょう)

ほころんだ日曜日の上に あたしたちは寝ころがる

あんたの背中のうえを行進している
色のついた 朝のひかり

あたしはスプーンでその骨をなぞった
誰かが迷いこんだとき 道しるべになりますように

あたしはあんたのことがきらいだと言う

猫背になったあんたは しわくちゃになったぶどうを
ぽつり ぽつりと口に運んでいる

あたしにはなんの文句もない
いつもどおりの怠慢で おんなの子のつもりになる

読みかけの物語は窓からすてて
そろそろ詩でも読みましょうよ

(四角い部屋に あたしの声がひろがって
ことばのしみが飛びちっていく 
ここはもう
あたしの部屋にはならない)

あんたの太ももに両足をのせて
大きくなったり
小さくなったりする文字を
追いかけていく
 


自由詩 記述 Copyright むらさき 2007-05-12 00:41:42
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