行くあてのない列車に乗って
村木正成

車窓がくもって何者かが問いかける
移民の悲しみ似た淡くはかないものだ
いくつかの希望を抱いて死んでいった
若者の中の一つの宇宙だ

車窓がくもって見えていたものが歪む
ひときれのパンに空いた穴のようなものだ
時間の中に溶け込もうとして消えた
科学者のため息だ

何気ない日常が
ひとつ壊れただけでも
ぼくらの世界はたちまち無くなる
朝日が二度と昇らないなんて
誰がしんじる?

車窓の中にある風景は
いったいだれが創ったのか

車窓がくもってあらゆる意識がすれちがう
地球儀の裏側にある太陽みたいなものだ
二重の嘘を身にまとった
政治家の安息だ

何気ない日常が
ひとつ壊れただけでも
ぼくらの世界はたちまち消えさる
夕焼けが二度と沈まないなんて
誰が信じる?

車窓の外にある風景は
いったいだれが認めたのか


自由詩 行くあてのない列車に乗って Copyright 村木正成 2007-05-10 23:54:09
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