帰りたい場所
黒子 恭

ああ この
生まれてくるもの

帰りたかった場所
だったのか。
 
日々が、やはらかく、
差し込んでいる
隣に笑顔が、ある
ここで 揺られて
羊水を思い出す
 
胎内に鼓動
一つ、二つ 刻んだ
いのち は、
今、回帰してゆく
 
ああ この
あふれてくるもの

帰りたかった場所
だったのか。
 
こんなにも
私は包まれていた
三点倒立する、ビルの隙間に
優しさが残らないのは
あの場所に
置いていたから
 
還ったら、そおっと
拾いにいくよ。
 
ほら おとな から
こども になって
あかんぼう になって
かあさん へ還る、ように
 
  ―揺られている。
  ―包まれている。
 
 
 
拝啓
母さん、あすこは
少しばかり渇いたものがさ迷っているので
心音の波打つ躍動は聴こえないので
今日、夕陽が沈む前にでも
その優しさに 帰ります。
そしたら また、あの頃のやうに
微笑みたいと 思うのです。
 
今から、三時の便の
切符を買います。
 
 
 
 
 
 
 


自由詩 帰りたい場所 Copyright 黒子 恭 2007-05-10 02:11:34
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