嫌なことを沢山経験して
大人になっていくんだよ
って、あの人が言った。

自分の弱いとことか
ダメなとことか
そういうのって悪くない
って、あの人が言った。

そうか、そうか
と私は言って
ショートケーキを食べてみた。

またショートケーキが食べたいなぁ
って思っていたら
我慢を覚えて
いつのまにやら
大人と呼ばれるようになっていた。

えぇ、でも
出来るようになりたかったものは
何一つ今でも出来ないよ？
ショートケーキは食べれるようになったけど
上のイチゴを食べるのは
今でもすっごくためらっちゃうんだ

それになんか
普通じゃないかい？
ショートケーキって。
ショートケーキがそんなに好きだったか思い出せない。

別に悪いことじゃないって知ってるけどさ
頭の中に
もっとおいしそうなものがあるんだ

ねぇ、どうしよう？
って私が言ったらさ

そういうことも経験するんだ
それは悪いことじゃない
みんなそうで
それを乗り越えて大人になるんだ
ってあの人は言った。

そうか、そうか
なんてもう言えなくて
そりゃそうさ
だって残りの人生見えてきてしまったもの
タイムリミットはそう遠くはないんだぜ？

誰もがそう思って
でもやっぱりこれでいいと
ショートケーキに戻ってくるんだ
ってあの人は言った

正直イラっとしたんだけど
なんだかなんだか
全てが無駄かなんて思ってみたんだけど

それさえ
全てが階段

私は
なんだか
なんていいながら
あぁ今日も
フォークを放すことが出来ないでいる