とけてなくなるまで
コトリ

おおきな、おおきな水槽の中
36.5℃
人間と同じ比重の液体にはだかのわたしは浸かっていて
朦朧と堕ちゆく意識たち

完全な無刺激状態の中
浮きも沈みもしない身体
時間軸も、生理的欲求も無視して

静かな
暗くも明るくもない場所に
ひとりぼっちで
眠らないのに目を閉じて


そのとき
何を感じるだろう
どんな色がみえて
どんな音楽がこころに流れるだろう
水中で 口に出せない歌をうたう
自分の声を思い出せるだろうか


何を望むだろう
したいことは何だろう
冷たい風に吹かれてまで
やり遂げたいことはあるだろうか

誰に会いたいだろう
手中を流れる砂粒の如し出会い達
心から愛し合えた人もいれば
泣きながらはなれた人も
すれ違い交われない人も多かった
誰に会いたいだろう
会って 何を伝えたいだろう

失いたくないものは何だろう



宗教はぜんぜんわからないけれど
ちいさいころから信じていた
わたしのかみさまには、会えるだろうか
何と言うだろう
ずるくて
みっともない、かっこわるいわたしに



自らの意思で
またここに戻ってくることはできるだろうか




最早、真っ直ぐに歩くことすら危うい




自由詩 とけてなくなるまで Copyright コトリ 2007-05-06 10:39:02
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