時計
見崎 光

愛していた日々を薫りに変えて
砂は静かに落ちていた

トキメキを含ませた粒子は
弾けることもなく
ただただ軟らかに流れているだけで
緩む頬が戸惑いに
くすぐられた

何気ない言葉と
絡み合う瞳
懐かしい感覚が捉えた
心地よい時間

熱った唇は
愛おしさを隠すのが精一杯で
並べた肩の高さの違いが
意地らしいほどに
刻めない数粒の砂


追いかけた背中は
近くなるほどに刹那を誘う
目の前の貴方の胸
見上げた笑み
欲して止まない高鳴りは
溢れそうだというのに

やっぱり砂は
少量をこぼすだけ

もう一度…
もう少しだけ
流れ終えた砂の瓶をひっくりかえし
またカラになるまで

貴方を愛してみても いいですか?




いつか
二つの砂時計が
それぞれの時を
紡げるように




自由詩 時計 Copyright 見崎 光 2007-05-03 22:40:30
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