さくら
今田コボ

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母が死んだ日の翌朝
わたしはいつもの時間に起きて
いつものようにご飯を食べた


横たわった母の手を
そっと、さわる
(つめたい、手)
(瞼はかたく閉じられていて)
これが死なのだと
ようやく理解したわたしは
涙をこぼした


その日は雨だった
黒色に染まったわたしは
知らない人達に
笑、いかけて
死、んだ母は
知、らない人達に見送られ

(心に穴があいた)
(黒に染まったわたし)

次に母に会った時
母は
  白い
    灰
     のよう


父が母の頭を
二本の棒で割る
(母、の頭が)
(パキンと音をたてて)


くずれていく
目は、どこにいったの
ねえお父さん
母の目は
    どこにいったの


雨がいっそう強く
わたしを叩きつける
わたし、どこへいけばいいの


あ、桜が咲いている
わたし、は
下に落ちている
たくさんの花びらを
ふみ
こなごなにした




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自由詩 さくら Copyright 今田コボ 2007-05-03 20:30:33
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