イメージと空白
村木正成
開け放たれた窓から
夜風がカーテンを揺らし
月の光がこぼれだす
少女の眠れぬ夜はするどく
闇の中へと切りこんでいく
少女がひとさし指で
空をなぞるように
星の数をかぞえている
夜露は空にひたと落ち
つぎつぎに波紋を拡げてゆく
夜風が星の輝きをまとって
麦畑のなかを通り抜けると
麦畑は黄金に輝く
案山子が銀河の彼方にある
自分の居場所を探している
眠りについた少女の夢は
月の裏側に漂流し
そこに世界を作ってゆく
いくつもの想いは螺旋状に
夜空を駈け上がってゆく
月の光に照らされて
湖のうえにかかる霧は
やがてすべてを隠してゆく
眠る少女の黒髪は
風になびき夜空と絡まる