影踏み
土田

わたしはわたしを見ていた
夕暮の公園の砂場にわたしを見ていた
わたしはわたしを見ていた
朝焼けの庭先の花壇にわたしを見ていた
わたしはわたしを見ていた
昼下がりの小学校のグラウンドにわたしを見ていた
わたしはわたしを見ていた
わたしのほかにも
たくさん人がいたが
姉の姿はそこにはなかった
わたしはその名もない砂を踏み
わたしはその名もない花を踏み
わたしはその名もない土を踏んだが
わたしの影を踏んでくれる
姉の姿はそこにはなかった
それからわたしは
砂と花と土に名をつけてしまい
姉の名前を忘れてしまった
田園のまっただ中
いなごたちが
勢いよく各々の稲穂から
飛び去っていった


自由詩 影踏み Copyright 土田 2007-05-02 22:40:57
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