愛のない便り
板谷みきょう


ずるいよ
君から去ったくせに。
あの頃から少しは大人になれたはずだったのに。
出口が見えない迷路の中で、夜の街角に怯えてる天使達。

本当は
「今でも愛してる。」なんて
言っちゃいけなかったんだ。

君の頬冷たいよ。
君はソレには、気付かない。

めまぐるしく変わって来た時代の交差点で、ボク達は運命に出逢った。
「今夜は無理よ。」と言いながら、ボクに抱かれて君は肉体をすくませた。


愛のない便りが届く。


銀色の月の下で
かき消せない傷を
胸に
切なくて告白した。



愛のない便りが届く。



涙流すのも悪くないものよね
抱き締めてあげるから、何も言わなくても良いわ
映画のラストシーンみたいには、うまく行かないものなのよ



愛のない便りが届く。



優しさまでがボクを苦しめ、いつの間にか時だけが過ぎていた。


もう悲しめる事はしないから。月明かりだけを頼りに、思い出に凍えて部屋の明かり見上げていた。人込みに揺られながら、思いのままに生きられるのならと、全てを投げ捨てた。こんな気持ちを、君は笑っていたはずなのに。



愛のない便りが届く。



似た者同志で堂々巡り
愛と友情に悩み続けた
こともあったのよ


愛のない便りが届く。



見えない明日より
何気ない優しさで
今夜を感じてみたい
臆病過ぎたアタシ達は
未来を見詰めることさえ
躊躇っていたのよ



柔らかな唇が忘れられない。
本当は求めていたんだ。
夜の闇の中で孤独に悩み、初めての恋に裏切られた。
と思ったボクは、全てが信じられなくなった。


愛のない便りが届く。



互いに知らない暮らしを送ってきたのよ
だから、もう迷わないわ



愛のない便りが届く。

ためらう気持ちが愛を遠ざけている。
傷付いた夜、電話ボックスで独り泣いた。

欲しかったのは
ボクだけに宛てた愛の便り。

君はソレには気づかない。

愛のない便りが届く。


自由詩 愛のない便り Copyright 板谷みきょう 2007-05-01 21:29:10
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