水平線の向こう側で
山中 烏流

限り無く空に近い
水平線の向こう側で
少女は空になる、と
言ったもんだから
 
僕は黙って
海に潜るしかなかった
 
 
何処までも青いだけ
そんなことはもう
ずっと前から知っている
つもりで
 
 
(海が青いのは)
(空が青いのは)
 
(一つになりたかったから)
 
(では、ないの)
 
 
少女は無事に
空になれたようで
空気を通じて
僕に、話しかける
 
耳を塞いでも
聞こえてくるのは
多少、横暴だと思うのだが
 
 
(空の涙は青いのよ)
(それが溶けて、海は)
 
(今、分かったの)
 
 
そうして
 
水平線が
頭上に消えていくころ
たくさんの雫が
水面を叩き出した
 
透明な筈の
雫たちが、何故か
青く染まっているように見えて
少しだけ
気持ち悪くなって
 
 
(海は)
(望んで青くなった訳じゃ)
 
(無かったんだね)
 
 
僕は
限り無く海に近い
水平線の向こう側で
 
まだ、あとちょっとだけ
人間でいることに
 
決めた。


自由詩 水平線の向こう側で Copyright 山中 烏流 2007-05-01 10:09:42
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