最後のお願い
なかがわひろか

あんたが欲しがるもんは
全部あげた
せやろ?
欲しいもんは
全部あげた

あんたが欲しがるもんを全部あげたら
あんたはもう何にも欲しがらんようになった
あたしが何を聞いても
あたしが何を見せても
あんたは笑うだけで
何にも欲しがらんようになった

なあもっと欲しがって
なあもっと欲しがって

あたしの血でも内臓でも
目ん玉でもなんでもあげるから
もっともっと欲しがってよ
もっともっと欲しがって

そんなことを言っても
あんたはただにこりと笑うばかりで
もうええよ
もうええよ
そういうばかりで

あたしはなんでもあげれると信じてた
あんたになら
どんな悪いこと犯しても
なんでもあげれると思ってた

もうええよ
ごめんな
もうええから
もう十分もろたから
もうええよ

あんたを棺の中にいれたとき
それでもあたしはまだ
なんかしてやれると思ってた
ここにいる人たち全部殺したら
あんたが生き返るんなら
あたし、そうしてたかもしれん

あたしはあんたのためなら
なんでもしてあげたかった
どんなことでもしてあげたかった
もうええよなんて
聞きたなかった

なあ聞こえてるか
なあ聞いてるか

もうあたしには
何にもできへんの?
どんなお願い事でもええんよ?
なんか言うてや

(「最後のお願い」)


自由詩 最後のお願い Copyright なかがわひろか 2007-05-01 00:42:25
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