誰も本当の私を知らない
夕凪ここあ

くぐる
くぐもる
声にもならない

ずっと夢見ていたら今朝
魚になってしまっていた一番の引き潮

うろこがくすぐったい
尾びれが不慣れで痛い
肺呼吸が懐かしい
それよりも
水平の向こうまで泳いでいたい

もぐる
そまる
哀しいことがあっても涙より
潮っぽいもので満たされる
泡が生まれてく
泡が生まれてく
綺麗だね
哀しみだって

このまま
水平の向こうの向こうまで
泳ぎきってしまえ
誰も本当の私を知らない
そんな哀しみ捨ててしまえ
くぐもりながらだって



追いかけて
弾ける夢
先にまた
泡があって


もう満潮になるころ
やっと覚え始めた魚の呼吸

まだ見たことのない水平線が
いびつだったとしても
いいよ


自由詩 誰も本当の私を知らない Copyright 夕凪ここあ 2007-04-30 23:58:07
notebook Home 戻る