名残雪
ベンジャミン
いずれは誰にでも
やってくる終わりのときを
誰が教えてくれるわけでもないけれど
それはまるで
人生という山に積もる雪が
まさにその季節に向けて
静かに融けてゆくように
新しい命を残せればその命に
そうでなければその糧となれれば
惜しくもないと思えるのでしょう
けれども故郷をなくした私の
今、帰りの道すがら
遠くに見える山肌に
うっすらと残る雪が
どうにも淋しく見えてしまうのは
どうしても押さえられない心境で
どこか重たい空色に悲しみを重ねて
もう春だと言うけれど
私の中では
水結晶の名残りの雪が
まるで涙のように降っています