名残雪
ベンジャミン


 いずれは誰にでも
 やってくる終わりのときを
 誰が教えてくれるわけでもないけれど


それはまるで
人生という山に積もる雪が
まさにその季節に向けて
静かに融けてゆくように
新しい命を残せればその命に
そうでなければその糧となれれば
惜しくもないと思えるのでしょう

けれども故郷をなくした私の
今、帰りの道すがら
遠くに見える山肌に
うっすらと残る雪が
どうにも淋しく見えてしまうのは
どうしても押さえられない心境で
どこか重たい空色に悲しみを重ねて

もう春だと言うけれど

私の中では
水結晶の名残りの雪が
まるで涙のように降っています


       


自由詩 名残雪 Copyright ベンジャミン 2007-04-29 18:12:19
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