(未詩) (無題) (苺)
新宮栞









(高架下で)
雨が静止する、ノイズは、
細かい
画家は絵を描き、___
作曲科は音符を記し、___
詩人は、川岸、
意味を、安楽死させる___










(真昼のカーテンごしに)
テーブルクロスが繰り返す、机上で、湿度が高い、グラスに湧く水、
の中の、あめ玉、溶けてゆく、いちごの赤み、が、
唇を欲しがるの お年頃なの
冷えてる___です

テーブルクロスの繰り返す、
机上の、読書会で、カミサマたち、押印し、
宣言する、   「永遠を創造する権利を、我は放棄する」
ことを宣言して、その間、テーブル上の反復の隅で、短針と長針、
かけっこする(短針と長針)(目覚まし時計の)(壊れているスピーカ)

あなた、速かったね、
いつもあんたの誕生日が、
一番で、
追いつけなかったね、
あしぶみをしてました
地団駄をふみつけてました
(ばぁんばぁん)
あたし、卓球なら上手に、
サービスするよ、たくさん、
サービスするよ、必死に、___です







(産_三_室)
一つは安楽椅子に、神鳴声
一つは、静けさに耳、痛い
一つは、テロリストがサインの練習する
__________高架下で、三つの部屋は
          同時進行する、
          かけっこで、交わることなく、
音楽は饒舌であること、(という書類、)
作曲家は楽譜を仔細に塗りつぶし、
埋まる、川岸の、
照明は潔癖であること(という書類、
サイン入り)
産土神のお声、
   (新月が水面に反射する)





(オモヒデ)
ローソクノナイケーキト
グラスニシャンパンガアワダッテ
モッカンガッキガリピートスル
プレゼントハペンダントダッタヨ
アタシノハハハギャクザンスル
シュジュツゴノヌイメデハリガサワグ
アタシノハハハギャクザンスル
アタシ クビガナイ





(真昼のグラスで)
書類、完成された、サインで、埋まるのに、
   (産土神が欠席する)
テーブルクロスの机上の議会で、金、
核に向かうのを待って、暇つぶし、カミサマたちが、
ピンポンダッシュして、誰一人とて、姿を見せないが、
新月をたよりに画家は輪郭をなでて、(木炭で、)(木炭で、)(木炭で、)
(木炭で、_______________
__________まだ、退院できないね
              針が騒ぐから、)
(針と月は同期している、
 火葬場)





(いちご)
苺の空気でどの部屋も湿度が上がる
   (カーテンごしに、冷えている、
鎖、冷えている)
金管は真っ直ぐに吠えて、
鎖が、
絞まるよぉ







(日記)
   (月は
   「可決は先送りにされ、ただ待つばかりなので、卓球を
    始めた隣の部屋。この部屋の目覚まし時計はなら
    ない(壊れているスピーカ)
    針が競争するだけで、十分な音。針たちに負ける
    自信はない。全ての針は月と同期している(火葬場)
    のだから。あたしは幽体離脱して、月に愛される。
    地球の外ではいつも満月で、隣の部屋の可決すら
    もう関係ない。グラスで苺は溺れるたび(冷えている)
    に湿度計が回る(火葬場の)(暗闇でも)。産土神は無視
    される関係ない。産土神のサインのない書類関係ない。サイン
    なしで可決する関係ない。可決後、被爆する関係ない。可決後、
    被爆する関係ない。未来を凝視せよ(テロリスト)。月は常に明る
    い(高架下の川岸で、意味と共に)」
    常に明るい)





(祝詞)
蝋燭ノ無イケーキト
グラスニ葡萄酒ガ泡立ツテ
木管楽器ガ反復スル
贈物ハ首飾リダッタヨ
私ノ母ハ逆産スル
手術後ノ縫イ目デ針ガ騒グ
私ノ母ハ逆産スル
私 首ガ無イ



(祝詞を読む)
画家ヨ描ケ
作曲家ヨ記セ
詩人ヨ安楽死サセヨ
(高架下ノ川岸)(ノ部屋ノ一ツ)(ノ中デ読ムコト)
(テーブルクロスノ上ガ望マシイ)
__________「これ以上の我への冒涜は許されない。
           我は永遠の創造を放棄する。
           無に帰せ。
           無は、いつか終わる。
           (ピンポンダッシュはもう飽きた)」

苺がたべたいよぉ苺がたべたいよぉ苺がたべたいよぉ










(日記)
   「傷一つない、見事なものだと自分で思ふ。背中も、胸も、
    生きやすい平たさだと思ふ。ただ、腕にはたばこの焼き跡が、
    直線で、どこまでも続く、廃墟、逆算すると、
    三つだけど、あたしは、ノウタリンは、
    奇形女児は、加算するしかできない
    仕組み___です。 (引き算も
    九九もできないから)すぐにからだが、
    こげてしまうと思ふ。てふてふがすきだと思ふ。
    思ひでは、たんじょうびのプレゼントですよ。
    こいする人のゆびが、あたしの
    せなかに、セルフポートレートを、
    かいたりんかくは、てふてふでしたと思ふ。
    あたしはたし算もかんじで名まえがかける
    いい子で、とくいなことはもっかん楽器だったと思ひます。
    あたしの母はぎゃくざんして、たいいんできません。
    プレゼントはペンダントだったよ。おめでとうというおことばを
    うけたまわった。ありがとうといいました。
    ろうそくは一本もなかったよありがとうといいました。
    おうちのテーブルはとてもちいさいちゃぶだい
    です。テーブルクロスはいちごを反復しまして、いちご
    の風がテーブルをふきとばすこういしょう。あたしは
    かそうばでうぶすながみとままごとする。あたしは
    かそうばでうぶすながみとままごと。
    あたし、このくらやみを新月とよびます。
    あたし、明日から、幸せになります。

 (高架下の安楽椅子で)」










----------------
2004. Aug


自由詩 (未詩) (無題) (苺) Copyright 新宮栞 2007-04-29 00:24:31
notebook Home