低地
「ま」の字

青空の下に
大きな穴が並んでいる

列車が来て停まる
線路の端に
白い雲が湧いていておそろしい
時間になると汽笛がひびき
車両に載せられた人と財布を
地番外にできた
あたらしい穴まで搬んでゆく

線路わきには
列車を待つ客が三々五々集まり
雑談したり
煙草をふかしたりしている
「社会主義ってのはね
「あれは市場主義の影みたいなもんでね

街の方角には
いつしか
ユーモラスなアドバルーンもあがらなくなった

曇ってきたが
風が吹き渡って心地よい
ただ影がないだけだ
「新時代を拓きましょう」
錆びついた拡声器が突然喋りだす

列車が近づいてくる

おれは
野積みの箱からシャンパンを掴みだし
曇天に
力いっぱい投げ込んだ


自由詩 低地 Copyright 「ま」の字 2007-04-28 21:05:51
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