縮尺
チグトセ

それぞれには帰りたい場所というものがあった
所属欲だ
僕と君は何故か駅で別れた
君は東京へ向かった
東京とは、夢の中に出てくる場所、のイデアを
指す、幻の国の名、ではないのかと
僕は呟く
君はそこへ住みたいらしいのだった
そこに会社があるとかいうことだった
(何の会社だろうか)
僕は神戸へ向かった

バイバイ

別れ際の君は笑顔の歯だ
どのみち
僕もなるべく眩しそうな三日月の視界だ

がらんどうの特急電車は
何から何まで、やけに親切で
車掌のアナウンスは切ない
長いこと通ったのは真空管のような場所で
僕が立ったのは、やはり神戸、
僕が所属を始めた街だった


ああ、また金が減っちまったい

と君と金とを簡単に比較してみたりする


知っているコンビニに入り
マップルを立ち読みしてなんとなく
神戸と東京の距離を測ってみたりした
手首から肘まで、よりも気持ち短いくらい
何が何だかわからない
ためいき
とにかく
君のところまで行くのに
電車
飛行機
新幹線
バス
タクシー
別に
ぜんぶ可能だ
ぜんぶ可能だけれども
ただどれも
コンビニからは通じていないのだ
という、ただそれだけのこと
なんだかなあ

店を出
おかしなことに
街はみんな黄色くなっている
山吹色のファミマなんて
なんだか見事で
気が付いたら、落陽から
君の方角を逆算してみたりしている
眩しいので背を向けた

ああ
遠いなあ

そこは
遠いよなあ


自由詩 縮尺 Copyright チグトセ 2007-04-27 17:49:22
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