はぐれ水
千波 一也



もう
どこにも帰れない

そんな気がした夕暮れは
どんなことばも
風にした



 ながれる雲の
 行き先はしらない

 突きとめずにおくことが
 しあわせだとは
 かぎらない

 揺られる髪は音もなく
 より添うでもなく
 離れるでもなく



透けてゆくものに
残されること

それが、時刻



ほんとも嘘も
燃えるようにして
かばい合い、
奪い合い

それゆえに、水

それすらも
水にして



たとえば明日が右手なら
左の手には
温もりを置き

かなしみの日を
輝くために

両の岸から





自由詩 はぐれ水 Copyright 千波 一也 2007-04-27 10:55:29
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