明るい日
塔野夏子

世界の終わりを思わせるほど明るい日
地の果てのようながらんとした広野に
世を捨てたようにひとつ立つ古い塔のそばで
君は僕を待っていた

僕らは手をつないでだまって塔をのぼった
ひょっとしてこの塔が僕らごと
くずれ落ちやしないかなんて少しだけ心配しながら
でもそれもいいかもなんて少しだけ思いながら

てっぺんについて
僕らは見わたした
手をつないだまま一面がらんとした広野を
そしてまるで潮騒でも聴いているみたいに
ずっと寄り添っていた
どうしようもなく明るい日の
ただなかで
どうしようもなくふたりきり

ふたりとも本当に何も云わないままで

これが世界が終わったあとの
僕らの記憶



個人サイト「Tower117」掲載





自由詩 明るい日 Copyright 塔野夏子 2007-04-25 12:02:46
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